キツネ女の独りごち

片言のベトナム語を操りだす怪しい外国人枠でベトナムに住んでます

失くしものの独りごち

腕輪を失くした。

恋人からもらった大切な腕輪だったのに、外れたことに気づかなかった。

本当にショックで悲しくて、彼に何度も謝った。彼はただ、Của đi thay người とか、không sao cả! とか言う。của đi thay người ってのは、あなたの代わりにモノが逝ってくれた、つまり厄落とし的な意味の言葉である。彼はベトナム人で、しかも私からすれば仕事なのか何なのかわからないようなことで金を得ている。率直に言えば貧乏人である。どう考えても彼より私の収入の方が上なのだが、彼は一度たりとも金の無心をしたことがない。そればかりか、いつも支払いは彼の担当で、申し訳なくなる。

しまった彼の話が長くなってしまった、とにかく腕輪を失くしたショックが大きくて、私はしばらく落ち込んでいた。しかし落ち込んでいても仕方がないので、失くした場所に赴いてみた。もしかしたら落ちたままかもしれない、という、いかにも日本人的な平和ボケ思想を抱いていたのだ。

 

しかしまあ、当然というか何と言うべきか、見つかることはなかった。なんでもベトナム人は、落ちているもの、拾ったものは、たとえ他人のものでも身につけてしまうらしい。その思考回路は到底理解できるものではない。一言で言えば、気持ち悪い。他人の手垢のついたもの、まして拾ったものを身につける図太さはさすがとさえ思う。

 

出てくることのないvòng tay のことを思い出しては、落ち込む日がしばらく続いた。恋人は「また買ってあげるから」となだめるが、私はあの腕輪でないと嫌だ。

Của đi thay người...モノが身代わりになってくれた、日本語だと厄落とし的な。モノがなくなった人に対してかける言葉

 

もし身につけてる奴がいたら腕ごと切り落としてやる、と今日もすれ違うhot girl どもの腕をガン見する私であった。